今回は機器リスト(Equipment List)について解説します。
機器リストはその名の通り、そのプラントで設置される機器、設備を最低限の仕様(Short Spec)と共にリスト化したものです。
機器の種類ごとに設計温度、圧力、サイズ、容量、材質、定格電力など、が分かるようになっているので、その機器がど程度の大きさ、capacityがどのくらいかざっくり把握するのに役に立ちます。
これを見るだけで、そのプラント規模が分かるようになっているので、設計初期で作成する必要があり、PFDと共にプラント建設の最後(試運転完了)まで、常に携行される重要な図書です。
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機器リストの分類
機器リストで分類される機器の種類は以下の通りです。
機器リストで分類される主な機器
・反応器
・蒸留塔
・ドラム
・タンク
・加熱炉
・熱交換器
・コンプレッサー(ファン、ブロワ含む)
・ポンプ
・ボイラ
・その他機器、設備
それぞれの種類の機器で、機器リストに記載する項目は次の通りです。
反応器
・Type
・数量(運転、予備)
・触媒充填量
・サイズ(径、高さ)
・設計圧力、温度
・材質(Material of Construction)
・重量
特徴的なのは触媒の充填量です。PFDの運転条件から、触媒の寿命を考慮して、製品のスペックを満足するために必要な触媒量を算出します。
蒸留塔
・Type
・数量(運転、予備)
・サイズ(径、高さ)
・トレイ or Packingの種類
・トレイ段数 or Packing容量
・設計圧力、温度
・材質(Material of Construction)
・重量
特徴的なのはトレイ or Packingの仕様です。PFDを作成時に蒸留塔のタイプ(棚段塔か充填塔)を検討し、製品のスペックや運転ロードの変動に対応できるようにサイズや、段数 or 容量を検討します。
【蒸留塔】棚段塔はどんな構造?棚段塔の構造・特徴と運転範囲について解説
【蒸留塔】充填塔と棚段塔は何が違う?充填塔の構造・特徴について解説
ドラム
・Type
・数量(運転、予備)
・サイズ(径、高さ)
・設計圧力、温度
・材質(Material of Construction)
・重量
タンク
・Type
・数量(運転、予備)
・サイズ(径、高さ)
・設計圧力、温度
・材質(Material of Construction)
・重量
記載する情報はドラムを同じなので、一つのシートにまとめても良いです。
加熱炉
・Type
・数量(運転、予備)
・熱負荷(Duty)
・コイル設計圧力、温度
・材質(Material of Construction)
・重量
重要なのは熱負荷とコイル設計圧力、温度です。加熱炉はプラントの中でも最も過酷な条件で運転されるため、後からの変更が難しいです。
熱交換器
・Type
・数量(運転、予備)
・熱負荷(Duty)
・伝熱面積
・サイズ(tube長さ、Shell径)
・設計圧力、温度(Tube側、Shell側)
・材質(Material of Construction)(Tube側、Shell側)
・重量
Typeの所にShell/Tubeタイプの熱交換器かPlateタイプが空冷タイプかを記載しておくことが重要です。
それぞれのタイプで記載項目が異なるので、別シートに分けても問題ありません。
コンプレッサー(ファン、ブロワ含む)
・Type
・数量(運転、予備)
・容量
・定格電力
・差圧
・設計温度
・材質(Material of Construction)(インペラ、ケーシング)
・重量
コンプレッサーは機器の中でも消費電力が大きく、ここに記載する定格電力がプラントの電気設備設計に大きな影響を与えます。
ポンプ
・Type
・数量(運転、予備)
・容量(+ミニフロー)
・定格電力
・ヘッド
・設計温度
・材質(Material of Construction)(インペラ、ケーシング)
・重量
遠心ポンプの場合、プロセス上必要な流量に加えてミニフローの流量がポンプ全体の容量を決めることに要注意です。
基本設計の初期段階では、ミニフローの流量は分からないので、「必要流量+ミニフロー」という記載にしておいて、ベンダーが決まり、機器仕様を受領したらミニフローの流量を具体的に記載します。
ボイラ
・Type
・数量(運転、予備)
・容量
・サイズ(縦幅、横幅、高さ)
・設計温度、圧力
・材質(Material of Construction)
・重量
その他機器
・Type
・数量(運転、予備)
・容量
・Spec 1
・Spec 2
・Spec 3
・設計温度、圧力
・材質(Material of Construction)
・重量
フィルター、フレアー、発電機、冷却塔など、上記に当てはまらない、その他の機器について記載します。
Specの項目は適宜書き換えても問題ありません。
機器リストの出図Phaseと目的
上述の通り、機器リストプラント設計における基本設計から詳細設計にいたるまで、進捗に応じて情報量を変えて出図を繰り返します。
大きく分けて2つあります。
・基本設計時
・詳細設計時
基本設計時
主な作成目的は以下の通りです。
・P&ID作成
・配置図作成
・機器データシート作成
基本設計の初期段階では、PFDと共に機器リストを作成し、これを元にP&IDや配置図が作成されます。
この段階では、ベンダー情報が集まっておらず、上記で解説したような各機器の記載項目全てを記載することは難しいです。
その際は過去案件における類似機器のデータを入力するか、類似機器がなければ機器タイプ、サイズ、重量だけでもなんとか入手すれば、配置図の検討も可能です。
P&IDの作成にあたっては、上記に加えて、設計圧力、温度や材質の情報も必要です。
また、機器のデータシート作成する際は機器リストをベースとして作成します。データシートを抜けなく作成するためにも、まずは機器リストを作成することが重要です。
詳細設計時
主な作成目的は以下の通りです。
・基本設計で決定した機器仕様の妥当性チェック
・補機を追記してupdate
基本設計が完了し、機器のベンダーも決まって情報を入手したら、その機器図や機器仕様書に基づいて機器リストをupdateします。
基本設計段階で決めた容量、材質、設計圧力、温度や材質が適当かどうかチェックします。
例えば、ポンプヘッドについては、基本設計段階では、配置を仮決めしてヘッドを計算しますが、詳細設計段階では配置も確定しているため、その配置で適切なポンプヘッドになっているかどうかを確認します。
もし現配置に適さないポンプヘッドになっていれば、ポンプの買い直しとなってしまいます。
(そんなことはまず無いですが)
また、コンプレッサーの潤滑油ユニットなど、いわゆる補機といわれる、機器内の細かい機器についても追記することが多いです。
これを記載しておくことで、細かいものも含めてプラント全体の機器数を大まかに把握することができます。
まとめ
プラント設計における機器リストの記載内容、目的について説明しました。
最も重要なのはPFD作成時、機器リストも作成することで、まずはプラントの規模、設備仕様を把握することです。
機器リストに記載される最低限の情報(タイプ、サイズ、容量、設計圧力、温度、材質)だけでも、その機器、設備のコスト、建設費を推定可能なので、そのプラント建設コストも把握することが可能です。
もちろん、P&ID作成、配置図作成など、設計業務を次工程に進めるためにも重要な役割を果たします。
プロセス設計部門だけでなく、他部門でも常に最新版が共有されなければならないので、プロセス設計担当のプラントエンジニア(プロセスエンジニア)は情報を密に共有することを心掛けて下さい。
プラント設計基礎⑧では設計圧力、設計温度の決定方法について解説しています。
この記事が役に立てば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。