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【計装】ブルドン管式圧力計のトラブル事例と対策について解説

今回の記事ではブルドン管式圧力計のトラブル事例と対策について解説します。

ブルドン管式圧力計は、プラントに設置される圧力計(現場計器)で最もよく用いられるタイプですが、それだけに様々なトラブルが発生します。

本記事では代表的なトラブル事例とその対策について解説します。

ブルドン管式圧力計の代表的なトラブル

・ ゼロ点ずれ
・ 振動、脈動
・ 過加圧
・ 結露
・ 腐食
・ 精度外れ
・ 閉塞

プラントの建設、改造案件で圧力計の設置を考えている方は参考にしてください。

圧力計の種類についてはこちらの記事も合わせて参照ください。

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ゼロ点ずれ

ゼロ点ずれとは、圧力計を大気開放にしても針がゼロ点を指していない状態です。

主な原因として、

① 圧力計の運送時の衝撃で針がずれたり、ギアの嚙合わせがずれる。
② 圧力計の取り付け位置の液ヘッドの差を考慮し、あらかじめ針を調整して納入している。

といったものがあります。

対策

①については、ゼロ点校正を行うことで調整できますが、高圧ガス保安法の型式認定品ではゼロ点校正は禁じられているので注意が必要です。

②については、下図のように測定したい箇所の圧力と圧力計との高さに差があり、その差の液ヘッドを考慮してあらかじめ指針を調整して納入しているケースがあります。

圧力計がメイン配管の下にある場合、H [m]の液ヘッド分、圧力計の指示値が大きくなるため、あらかじめ圧力計の指示を低めに設定することがあります。圧力計がメイン配管の上にある場合はその逆になります。

そのため、②のケースの場合は、あえてゼロ点をずらしていることになるため、特段の対応は必要ありません。なお、測定流体が気体の場合はH [m]のヘッドは無視できるので、このような調整はなされません。

 

振動、脈動

圧力計の内部は精密部品で構成されているので、振動や脈動にさらされると、ギアの歯の摩耗の他、ロッドピンの脱落に圧力測定が不可能となるようなトラブルが発生します。

対策

原則的には、振動のある場所には圧力計の設置をしないことが一番の対策となります。しかし、実際には、プロセス上の要求により、振動が想定されるような箇所に設置せざるを得ないケースもたくさんあります。

そのような場合は以下のような対策が有効です。

・ 耐振用の圧力計を選定する。
※ただし、JIS規格で要求される耐振性能は、動圧耐久性能で最大15000回となっているので、周波数の高い振動、脈動が発生する場合は要注意。

・ グリセリン入圧力計を選定する。

簡易的な判定方法として、手で触れて振動が感じられる場合は耐振用の圧力計、針の先端が震えるような振動の場合はグリセリン入りの圧力計が推奨されます。

また、圧力計のアクセサリとして、スロットルやダンプナーを要求しておくことも有効です。特に、ダンプナーは圧力計とプロセス配管との間に挿入して使用するため、後付けが可能です。

過加圧

出典:Wika Blog

圧力計に過大な圧力がかかると、針が針止めに強く当たって針が変形する他、ブルドン管が変形したり破れてしまう、といったトラブルが発生します。

このようなトラブルは、ポンプの吐出配管などに良く見られます。理由として、ポンプ起動やバルブ切り替えにより、ウォーターハンマーやサージングにより瞬間的に大きな圧力が発生し、ブルドン管に大きな力が加わってしまうためです。

対策

主な対策を挙げると以下の通りになります。

過加圧の対策

① 圧力計のオプションにゲージセーバーを要求する。
② 圧力計のレンジを大きめにする。(3-4倍程度)
③ 配管にバッファータンクやアキュムレータなどの緩衝容器を設置する。
④ グリセリン入り圧力計にする。
⑤ 負圧になる可能性がある場合は連成計にする。
⑥ バルブの開閉時間を緩やかにする。

結露

圧力計に結露が発生すると、上画像のように指示値が読み取りにくくなったり、内部部品が錆びてしまう可能性があります。

特に、冷却水配管は流体温度と外気温との差により、圧力計内部で結露が発生するリスクが高くなります。

対策

結露を完全に無くすことは難しいですが、主な対策を挙げると以下の通りになります。

結露の対策

① 冷却水を測定する場合は、配管からの導圧管をできるだけ長くしたり、サイフォン管にすることで、圧力測定部での水温を外気温に近づける。
② 圧力計ケース内部に乾燥剤を入れる。(ただし定期的な交換が必要になる)
③ 圧力計内部に溜まったドレンを抜くための孔をケース下部に設ける。
④ グリセリン入り圧力計にする。
⑤ ダイアフラム式圧力計にする。(ただしコストアップ)

腐食

圧力計の腐食トラブルは、①環境由来、②測定流体由来のトラブルに分別されます。

環境由来

圧力計の周囲環境が金属を腐食する環境(めっき工場、海岸)の場合、ケースや内部部品が腐食する可能性があります。

対策

主な対策は以下の通りです。

・ ケース材質にSUSや樹脂等の腐食に強い材質を選定したり、耐酸性、耐塩塗装を実施する。
・ 目盛り版、針、内部部品、接液部をSUSにする。
・ 密閉式圧力計、グリセリン入り圧力計にする。

測定流体由来

圧力計の接液部の材質は、一般に真鍮などの銅系の材料です。そのため、酸やアルカリなどの腐食性流体によっては腐食のリスクがあります。

対策

主な対策は以下の通りです。

・ 接液部の材質をSUS(特にSUS316L)にする。
・ ダイアフラム式圧力計にする。
・ 蒸気にはサイフォン管を設けて、接液部の温度を下げる。

精度外れ

圧力計設置後、最初はトラブルが無かったとしても、その圧力計を数年使用していると、圧力計の指示がずれてくることがあります。このトラブルは精度外れと呼ばれます。

圧力計に使用されている圧力エレメント(ブルドン管やダイアフラムなど)は弾性体なので、繰り返し加圧、減圧されたり、長時間加圧された状態が続くと、金属疲労やクリープにより伸びてしまうことがあります。この伸びが指示のずれの原因となります。

対策

長期間使用されている圧力計は必ず定期的なメンテナンスを行い、指示値の確認、校正を実施することが重要です。

閉塞

粘度の高い流体や、スラリーなどの固体を含む流体の圧力を測定する場合、導圧管や受圧部が閉塞

してしまい、圧力測定ができなくなるケースがあります。

対策

原則として、このような流体を測定する場合は、ダイアフラム式圧力計が推奨されます。

ダイアフラム式は受圧部の材質、形状を種々選択できるため、塩酸や硫酸などの強腐食性流体、スラリー、高温流体といった幅広い流体に対応可能です。ただし、通常の圧力計よりも高コスト(10倍程度)のため、ダイアフラム式圧力計を選定する際は慎重な判断が必要です。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在160記事、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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