今回の記事ではブルドン管式圧力計の設計と設置上の留意点について解説します。
ブルドン管式圧力計はプラントの圧力測定で最もよく使われるタイプの圧力計のため、それだけトラブルも多く発生してしまいます。
実際のトラブル事例とその対策についてはこちらの記事を参照ください。
このようなトラブルは、圧力計を設置する目的、流体、周囲環境に応じて選定、対策をすることで回避することが可能です。
次項から選定、設計と設置上の留意点の具体例について解説します。
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圧力計選定時の留意点
精度
圧力計の精度等級として、0.6級、1.0級、1.6級、2.5級、及び4.0級があります。(数字が小さいほど精度が良い)
標準仕様は1.6級ですが、目的に応じて適切な等級を選択します。
温度
標準的な耐熱仕様は以下の通りです。
一般:-5℃~45℃
蒸気仕様:10℃~50℃
耐熱仕様:-5℃~80℃
後述しますが、流体の種類、周囲環境によって適切な仕様を選択します。
圧力
「定圧力」と「変動圧力」を考慮して圧力計の仕様を決める
必要があります。
定圧力:1秒当たりの圧力変動が1%以下、かつ1分あたりの圧力変動が5%以下の圧力
変動圧力:1秒あたりの圧力変動が1%以上の圧力
圧力計の上限圧力は、定圧力の4/3倍程度(最大圧力が100MPa以上だと3/2倍)、変動圧力の3/2(最大圧力が100MPa以上だと2倍)程度が目安です。
圧力変動が大きく、レンジを超える圧力がかかる恐れのある流体の場合は、オプションとしてゲージセーバーを要求します。
また、ウォーターハンマーなどが発生する場合は、測定レンジの見直し、グリセリン入り圧力計、オプションとしてスロットルやダンプナーを要求が推奨されます。
測定流体の留意点
不活性ガス(空気、窒素など)
空気や窒素など、腐食性が無い不活性ガスについては、銅合金系の一般材質が使用可能です。
ただし、半導体用途の高純度ガスについては、圧力計の接液部を研磨したSUS製のものが推奨されます。
水
水は一般材質で対応可能です。ただし、屋外設置の場合は凍結の配慮が必要です。
飲料水や純水など、衛生面、純度を重視する場合は、接液部をSUS製にして禁油・禁水処理の要求が必要です。
蒸気
蒸気は一般材質で対応可能ですが、オプションとしてサイフォン管+バルブを要求し、耐熱仕様の圧力計が推奨されます。
油
一般的な作動油、潤滑油の場合は一般材質で対応可能です。ただし、パッキンの材質には注意しておく必要があります。
液化ガス
LNGやLPG、液化水素などの液化ガスは極低温となるため、ブルドン管と直接接触すると脆性破壊を起こすリスクがあります。
そのため、サイフォン管を要求するなどして、接液部を常温にするような配慮が必要です。
アンモニア
アンモニアは真鍮などの銅系材料と接触すると、時間経過による割れ(シーズンクラック)が生じるので、一般材質は使用不可能です。
必ずSUS系の材質選定が必要です。
アセチレン
アセチレンは銅、銀、水銀と反応して爆発性混合物を作るため、一般材質は使用不可能です。
必ずSUS系の材質選定が必要です。
ヘリウム
ヘリウムは不活性ガスですが、分子が小さく漏れやすいガスなので、シート部に傷を付けないなどの配慮が必要です。
酸素
油が圧力計に残存していると、酸素と反応して発火、爆発のリスクがあるので、必ず禁油処理要求をします。
水素ガス
水素ガスは水素脆化(SUSに水素が浸透していき鋼材の強度が低下)によるブルドン管が割れるリスクがあるため要注意です。
水素脆化に強い材料(SUS316Lなど)の材質選定が必要です。
塩素ガス
塩素は空気中の水分を吸収したときに強い腐食性を示すので、チタン材の他、SUS材も推奨されません。ダイアフラム式圧力計(隔膜式圧力計)の適用が推奨されます。
その他腐食性の強い流体
SUS材が適用できないような強い腐食性流体については、ダイアフラム式圧力計が推奨されます。
スラリー
固体分によりブルドン管や導圧管を閉塞するリスクがあるので、ダイアフラム式圧力計が推奨されます。
冷えると固化する液体
ダイアフラム式圧力計が推奨されますが、圧力計に蒸気トレースなどで保温を行い、固化を防ぐ方法もあります。
食品、化粧品、薬品
滞留部をつくることが許容されず、計器洗浄も必要なので、それらに適応したサニタリー仕様の圧力計の選定が必要です。
周囲環境の留意点
周囲温度
ブルドン管は弾性体なので、周囲環境の温度が常温がかけ離れていると弾性係数が変わってしまい、誤差の原因となります。
そのため、周囲環境が高温(特に80℃以上)となる場合は、高熱があたらないように遮蔽するなどの対策が必要です。(直射日光により高温となる場合は庇を設置するなど)
※周囲環境が低温になる場合も同様です。
なお、誤差の方向としては、高温の場合はプラス側、低温の場合はマイナス方向の誤差となります。
また、周囲温度が急変する場所でも、ガラスが曇ったりケース内で水分が凝縮することがあるので、このような場所は避けることが推奨されます。
腐食性雰囲気
周囲が腐食性雰囲気の場合は、密閉式圧力計やグリセリン入り圧力計を選定し、外気が内部に入らないような対策が必要です。
※一般の圧力計のIPグレードはIP32、密閉式圧力計のIPグレードはIP43以上。
また、圧力計ケースに耐酸/耐塩塗装をしたり、ケース材質を防さび仕様(SUSや樹脂を選定)することも有効です。
振動
原則として、振動する場所には圧力計を設置しないことが推奨されます。
ただしどうしても設置せざるを得ない場合は、オプションとしてダンプナーを要求、圧力計を耐振仕様、グリセリン入り圧力計を選定します。
脈動
脈動がある箇所に圧力計を設置すると、繰り返し応力がかかるため圧力計の故障リスクが高くなります。
そのため、オプションとしてスロットルやダンプナーを要求して脈動を緩和する他、耐振仕様、グリセリン入り圧力計を選定します。
屋外設置
屋外設置の圧力計は、雨水が内部に侵入することを防ぐため、密閉式の圧力計を選定することが多いですが、真夏の炎天下などで圧力計ケース内で温度が上昇し、誤差要因となることがあるので要注意です。
また、圧力計のガラスは、一般的には無機ガラスですが、設置環境に応じて有機ガラスや強化ガラスを選定します。
設置上の留意点
メンテナンス性
圧力計はメンテナンスのために取り外すことがあるため、取り外し時に測定流体が流出しないよう、バルブやコックを設置するのが一般的です。
接続部
圧力計は一般的にねじ接続で設置します。ねじはGねじ(平行ねじ)とRねじ(テーパーねじ)があるので、ねじの形状を間違えないように注意が必要です。
Gねじを使用する場合は、シールテープではなくパッキンの使用が推奨されます。
設置方向
圧力計は前後左右に傾斜させず、正面を向けるように設置します。レイアウト上、どうしても傾斜させて設置する場合は、あらかじめ傾斜角度を指定しておく必要があります。
持ち方
圧力計を取り付け、取り外す際、ケースを持ってねじを回すと、圧力計本体がねじれ、内部部品が破損するリスクがあります。ケースを持たずにスパナを使って取り付け、取り外すようにします。
設置高さ
測定流体が液体の場合は、液と同じ高さにしてヘッド差をなくすようにします。
導圧管
導圧管が長いと応答遅れとなるので、なるべく短い長さになるようにします。