今回の記事ではプラント配管の主な構成要素について解説します。
主な構成要素は以下の通りです。
主な構成要素
・ 配管
・ フランジ
・ 継手
・ バルブ
・ ガスケット
・ ボルト/ナット
・ 配管サポート
細かい内容が多いですが、これらの配管部品が一つでも不足していたり、不適切なものが選定されていると、プラントの試運転で問題が発生したり、プラント建設が中断してしまうこともあります。
これらの構成要素を成す配管部品の選定は配管エンジニアによって行われますが、プラントエンジニアの一般知識としてプロセスエンジニアも知っておくべき内容です。
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配管(PIPE)
配管は以下の構成要素から成り立ちます。
ポイント
・ 呼び径(Nominal Size)
・ 材質(Material)
・ 厚み(Thickness)
・ 開先形状
呼び径(Nominal Size)
呼び径は配管サイズのことです。
A呼称とB呼称の2種類があり、A呼称はミリ系、B呼称はインチ系と呼ばれます。
A呼称は配管設計がJIS規格に基づく場合に使用され、主に国内プラントで使用されます。
B呼称は、ASME/ANSI規格に基づく場合に使用され、主に海外プラントや国内でも化学プラントでよく使用されます。
※「A呼称、B呼称」という呼び方は国内のみです。
1インチ=25.4ミリなので、A呼称とB呼称との関係としては、概ねB呼称に25をかけた数字がA呼称となります。
例えば、A呼称の40AはB呼称の1.5B(1.5")と、A呼称の100AはB呼称の4B(4")と等しくなります。
ただし、これらの呼び径はあくまで名称であるため、配管外径を正しく表しているわけではないこと、同じ呼び径でも配管厚みが異なると配管内径が異なることに注意は必要です。
材質(Material)
炭素鋼(Carbon Steel/CS)やステンレス(SS)などの材質を表します。
プラント配管の大部分は炭素鋼やステンレスですが、運転条件やプロセス流体の性状により、クロムモリブデン鋼(クロモリ)やモネル、ハステロイなどの合金や特殊な金属が選定されることもあります。
厚み(Thickness)
配管の厚みは「スケジュールナンバー(Sch)」で表現されます。
一般的にはスケジュールナンバーが大きくなると厚みも大きくなります。そのため、高圧仕様の配管はスケジュールが大きく、配管厚みも大きくなります。
ただし、スケジュールナンバーに対する配管厚みは配管径によって異なるため、ある配管径、あるスケジュールの配管の実際の厚みは、対応表を見るなどして確認する必要があります。
また、
開先形状
配管の先端(開先)の形状も様々種類があります。
プラント配管でよく使用される開先はベベルエンド(Bevel End / BE)、プレーンエンド(Plain End / PE)、スレッドエンド(Thread End / TE)です。
ベベルエンド
出典:Haihao Group
ベベルエンドは下図のように先端を斜めに加工され、開先角度を大きくすることで、溶接時の強度を高くして溶接不良を防ぐことができます。そのため、化学プラントのプロセス配管のように、溶接不良により流体の漏れが許されない場合はこのような開先形状が好まれます。
プレーンエンド
出典:Ferguson
プレーンエンドはその名の通り開先が平坦になっている形状です。一般的には小口径配管に用いられます。
スレッドエンド
出典:wermac
ねじ継手でねじ込み接続可能となるような形状をした開先をスレッドエンドを呼びます。こちらも、一般的には小口径配管に用いられます。
フランジ(Flange)
フランジは配管同士の接続や機器ノズルとの接続に使用されるつば状の部品です。
つばの部分にボルトを固定するための穴があります。
配管をフランジ接続にすることで、分解、接続が容易なのでメンテナンスしやすくなります。そのため、プラントのメンテナンス性を考慮すると、配管同士や配管と機器の接続においては基本的にフランジ接続が好まれます。
しかし、フランジ接続は分解が容易な分、漏れが発生しやすいというデメリットがあります。高圧のガス、蒸気や系外への漏れが許されない危険性が大きい流体や毒性流体を扱う場合は、フランジは採用せず、溶接接続する場合もあります。
フランジの種類はレーティング(Rating)、フェース面、タイプで決まります。
レーティング(Rating)
レーティングはプロセス流体の設計温度、設計圧力によって選定されます。
配管設計で適用する規格によってレーティングは異なりますが、よく使用されるJIS規格とASME規格では以下の通りです。
JIS
5K、10K、16K、20K、30K、40K、63K
ASME
150lb、300lb、600lb、900lb、1500lb、2500lb
フェース面
出典:Steel beat
フェース面はフランジ同士が接する面のことです。
よく使用されるフェース面はFF(フラットフェース/Flat face)、RF(レイズドフェース/Raised face)です。
タイプ
プラント配管でよく使用されるフランジのタイプは以下の通りです。
主なフランジタイプ
・ 差し込み溶接フランジ:SO(Slip on)
・ ソケット溶接フランジ:SW(Socket weld)
・ 突き合わせ溶接フランジ:WN(Weld neck)
・ ねじ込み式フランジ:TR(Threaded)
・ 遊合形フランジ:LJ(Lap joint)
差し込み溶接フランジ:SO(Slip on)
溶接式のフランジでは最も一般的に使用されるフランジです。
ソケット溶接フランジ:SW(Socket weld)
差し込み溶接フランジと似ていますが、フランジ内径に段差があるのが特徴です。小口径の配管によく用いられます。
突き合わせ溶接フランジ:WN(Weld neck)
配管とフランジを直接溶接接続できるため、強度が高く最も信頼性が高いフランジです。そのため、危険物流体を取り扱うことの多い石油、化学プラントで多様されるタイプです。
ねじ込み式フランジ:TR(Threaded)
出典:Trupply
溶接ではなくねじ込みで接続するタイプです。溶接作業が不要なのでコストが最も小さいですが、ねじ込みのため漏れやすく高圧、高温の系には使用することは出来ません。
遊合形フランジ:LJ(Lap joint)
出典:Metline
スタブエンドと呼ばれるつば状の配管継手と組み合わせて使用されます。フランジとスタブエンドはスタブエンドのつば部分で引っかかりをもつだけなので、ルーズフランジは自由に回転することができ、ボルト穴の位置を自由に調整することができます。
材質が高価、あるいはフランジに不向きな材質をフランジ材料として用いる場合に適用されます。
継ぎ手(フィッティング/Fitting)
継手は流体の方向転換や分岐、管の接続等を行うために用いられる配管部品です。
多く継手rがあり、一例を挙げると以下の通りです。
見出し(全角15文字)
・ エルボ(Elbow)
・ マイターベンド(Miter Bend)
・ ティー(Tee)
・ レデューサー(Reducer)
・ キャップ(Cap)
・ カップリング(Coupling)
・ ユニオン(Union)
・ ニップル(Nipple)
・ スタブエンド(Stub end)
・ オーレット(Olet)
・ ボス(Boss)
エルボ(Elbow)
出典:sunny steel
配管の向きを変えるために使用される配管部品がエルボです。角度も45°、90°など様々なものがあり、ショートエルボ、ロングエルボなどもあります。
マイターベンド(Miter Bend)
出典:ExcelCalcs
配管の曲げ部を直管を斜め切りして製作されたものをマイターベンドです。エビのように見えることからエビ管とも呼ばれます。
冷却水配管、空気配管など、低圧、大口径配管に適用されることが多いです。
ティー(Tee)
出典:Indiamart
配管の分岐部、合流部に使用される配管部品です。
母管と分岐配管の配管径が異なる場合は異型ティーが用いられます。
しかし、ヘッダー配管など、母管の径が大きい場合は対応できるティーが無いため、オーレットやボス(後述)を使用したり、直接溶接(イモ継ぎ)することもあります。
レデューサー(Reducer)
出典:Indiamart
配管径を変更する場合に用いられる配管部品です。径を小さくするだけでなく、径を大きくする場合もレデューサーと呼ばれますが、特別にEnlargerと呼ばれることもあります。
また、同心のレデューサーはコンセントリックレデューサー、偏心のレデューサーはエキセントリックレデューサーと呼ばれます。
特に制約がなければ、通常はコンセントレデューサーが用いられますが、ポンプの接続ノズル近傍で空気溜まりを作りたくないなどの特別な要求がある場合はエキセントリックレデューサーが用いられます。
キャップ(Cap)
配管の末端の閉塞のために使用されます。主にヘッダー配管に使用されます。
カップリング(Coupling)
配管を接続するために用いられる短い管です。主に50A(2")以下の配管を接続するために用いられます。
ソケット型、ねじ込み型などがあります。
ユニオン(Union)
出典:Indiamart
こちらも配管同士を接続するための部品です。
脱着が容易であるとメリットがあり、ねじ込み配管に必須です。
ニップル(Nipple)
出典:Indiamart
ユニオン同様、主に50A(2”)配管の接続に使用される配管部品です。
スタブエンド(Stub end)
出典:bgssg
フランジのタイプを遊合形フランジ(Lap Joint)とした場合に必要な部品です。詳細は遊合形フランジの項を参照下さい。
オーレット(Olet)
出典:jerry
母管の配管径が大きく、枝管と接続する際にティーが使用できない場合に用いられます。母管の穴を開け、オーレットを介して枝管を接続します。
ボス(Boss)
出典:EC21
オーレット同様に、母管の配管径が大きく、枝管と接続する際にティーが使用できない場合に用いられます。
バルブ(Valve)
出典:Turbosquid
配管内の流体を流したり止めたりすることや、流量を調整するために使用される配管部品の総称です。
手動弁(マニュアルバルブ)、自動弁(コントロールバルブ/調節弁/制御弁)がありますが、種類や特徴などの詳細は以下の記事で解説していますので、合わせてご一読下さい。
ガスケット(Gasket)
配管フランジの接合面に使用され、フランジの密閉性を確保するために重要な役割を果たしています。
ガスケットの入れ忘れや選定を間違えると、プロセス流体が漏れ、重大な事故につながる可能性があるので注意が必要です。
プラントでよく使用される主なガスケットは以下の通りです。
主なガスケット
・ ジョイントシートガスケット(Joint sheet gasket)
・ 渦巻き型ガスケット(Spiral wound gasket)
・ リングジョイントガスケット(Ring Joint gasket)
ジョイントシートガスケット(Joint sheet gasket)
出典:日本バルカー
最も低価格であるため、幅広く用いられるガスケットです。
常温、低圧の配管に適しますが、高温/高圧のプロセス配管に対しては適さないので、注意が必要です。
渦巻き型ガスケット(Spiral wound gasket)
出典:Longseal
幅広い温度、圧力に適するため、石油・化学プラントでは多用されているガスケットです。
フランジのレーティングでは600lb(ASME規格)までの配管フランジに対して適用されることが多いです。
リングジョイントガスケット(Ring Joint gasket)
出典:Indiamart
渦巻きガスケットでは適さない高圧のプロセス配管のフランジに適用されます。
一般的にはフランジレーティングが900lb以上の配管フランジに適用されることが多いです。
ボルト/ナット(Bolt/Nut)
出典:ASC
フランジ同士の締結に使用されます。
六角ボルトや全ねじボルトなどがあり、フランジのレーティング(温度、圧力)によって使い分けられます。
機器のノズルフランジと配管フランジと接続する場合は、機器側のフランジ厚みが大きすぎるとボルト長さが足りず、接続できなくなるため、このような場合はフランジの厚みとボルト長さの関係を要確認です。
配管サポート(Support)
配管重量を支持するだけでなく、振動防止や熱伸縮対策のために設置あれます。
配管サポートには、固定サポートだけでなく、可動サポートもあります。
目的に応じて適切なサポートを選定、配置する必要があります。
■可動サポートの例
出典:piping world
まとめ
今回の記事ではプラント配管の主な構成要素について解説しました。
主な構成要素
・ 配管
・ フランジ
・ 継手
・ バルブ
・ ガスケット
・ ボルト/ナット
・ 配管サポート
これらの配管部品が一つでも不足していたり、不適切なものが選定されていると、プラントの試運転で問題が発生したり、プラント建設が中断してしまうこともあります。
そのため、これらの構成要素の選定は配管エンジニアによって行われるとしても、プラントエンジニアの一般知識としてプロセスエンジニアも知っておくべき内容です。
この記事が役に立てば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。