今回の記事ではラインチェック(Line Check)について解説します。
ラインチェックとはプラント建設時、配管やバルブハンドルの向き等がアイソメ図通りに施工されており、プロセス要求が守られているかを確認することです。特に、配管施工が終わっており、スチームトレースや保温の施工が開始されていない段階で実施することが望ましいと言われています。
しかし、プラントの規模が大きく、ラインチェックのための期間を確保することが難しい場合は、大口径配管の施工が終わり、小口径配管の施工が8割程度終わったタイミングで実施します。
また、ラインチェックはプロセス設計担当のエンジニア(プロセスエンジニア)と配管エンジニアにて実施されます。
プロセスエンジニアはP&IDに記載しているプロセス要求(Note欄など)や現場の操作性、メンテナンス性などを確認し、配管エンジニアはアイソメ図通りに施工されているか(バルブの向きやサポートなど)を確認します。
補足:会社やプロジェクト規模によっては、品質保証部門や客先などで実施したり、外部委託することもありますが、本記事では大規模の化学プラントを想定しています。実際の業務ではプロジェクトの体制表や役割分担に従って下さい。
ただし、施工の最終確認のためには、各確認項目を双方の担当者が確認することが重要です。そのため、各担当者は、レイアウトや配管に関する技術資料、プロジェクトスペックなど把握しておかなければなりません。
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事前準備
確認するべき項目
プラントが大規模でエリアを割り振って複数の担当者でラインチェックを行う場合は、各担当者の思想を統一しておくことが重要です。そのため、事前に確認項目とその見方を決めておき、作業途中も連絡を取り合い、確認項目がブレないようにする必要があります。
また、プレコミッショニング作業のため取り外している計装品があるため、未設置品については事前確認が必須です。
工程に余裕がなく、どうしても全ての項目が確認出来ない場合は、ラインチェック実施時期や実施範囲は工程管理担当や工事業者と調整する必要があります。
改造指示の判断基準
ラインチェックの結果、P&IDやアイソメ図通りに施工されていないことが判明した場合は、現地改造を行わなければなりません。
ただし、改造の指示や判断は契約状況によります。
例えば、建設工事が所掌外の場合(EP契約のみなど)は軽微な内容でもコメントをするほうが良いです。しかし、工事が所掌内の場合(EPC契約の場合など)は軽微な内容も全て改造対象にしてしまうと、工程遅れ、納期遅れに繋がる可能性があるため、本当に改造が必要な項目だけ改造することもあります。
その場合は工程やコストを検討して判断されますが、プラントの安全に関する項目、製品品質に関わる項目は改造は必須です。
準備物
ラインチェックに必要な準備物は以下の通りです。
ラインチェックの準備物
・ ラダー昇降しやすいかばん、靴、ペン
・ P&ID
・ 3Dモデルデータ(あれば)
・ 3Dモデルレビューのコメント
・ Hook up図
・ アイソメ図
・ マニホールドリスト
・ チェーン操作のバルブリスト
・ アクセス不要バルブ、可動式架台で操作するバルブのリスト
・ プロジェクトスペック (バルブ向きなど、プラントの操作性に関して規定したものやドレン弁・ベント弁について規定したもの)
確認項目
ラインチェック時の確認項目について、プロセス要求、配管、計器、機器それぞれの観点から主なものを挙げました。
主な確認項目
・ プロセス要求
・ 配管関係
・ 計器関係
・ 機器周り
プロセス要求(P&IDのNote欄)
・ 配管のミニマイズ要求が守られているか。
・ 配管のスロープ(傾斜)要求やNo pocket要求が守られているか。
・ 二相流ラインの振動対策がなされているか。
・ 安全弁出口ラインの立ち上がり配管にWeep holeがつけてあるか。
・ 計器のIn viewは守られているか。
・ ドレン配管はLowest Pointから接続されているか。
・ 大気放出ラインの吹き出し先は安全な場所か。
・ P&IDで指示されている高さが守られているか。
・ サンプリングポイントの操作性は問題ないか。閉塞対策は配慮されているか。
・ 冷却水配管のベントやドレンは考慮されているか
・ 蒸気ラインにドレンやスチームトラップは取り付けらているか。
配管関係
・ バルブは原則としては水平配管に、ハンドルを上向きに設置されているか。
※スペースに制限がある場合、或いは操作性を確保するため垂直配管に設置することもあります。
・ 現場計器を確認しながらの開閉が想定されているマニュアルバルブの操作に問題ないか。
・ アクセス出来ないバルブに対して可動式の架台やチェーン操作による対応が考慮されているか。
※操作の必要のないバルブ(耐圧試験用の捨て弁など)はアクセス不要。
・ 液ラインにドレン、ベントノズルが設置されているか。ガスラインにドレンノズルが設置されているか。
・ バルブの取り付け向きは正しいか。
・ 操作或いはメンテナンスのためのアクセスが必要なバルブ等については、フロアやプラットホーム等から所定の高さ以内に設置されているか。
・ 操作頻度の高いバルブや緊急操作が必要なバルブはフロアやプラットホームに設置されているか
・ 予備ポンプ、制御弁バイパス等の切替弁はフロアやプラットホーム設置されているか。
・ バッテリーリミット用のバルブはプラットホームに設置されているか。
・ トレースのチュービングが配管にきちんと接しているか。
・ チュービングの接続kが保温の外に取り付けられているか。
・ スチームトレースが正しいマニホールドから接続されているか。
・ 安全弁や破裂板はフロアやプラットホームに設置されているか。
・ サンプリングポイントはフロアやプラットホーム設置されているか。階段でアクセスできるようになっているか。
・ 配管サポートはアイソメ図通りに適切に設置されているか。
計器関係
・ 圧力計や温度計などの現場指示計はフロアやプラットホーム等から見える位置に設置されているか。
・ 液面計や流量計についてはメンテナンスが容易にできるように配慮されているか。
・ 計器の発信器で現場指示があるものについては容易に見える位置に設置されているか。
・ 制御弁や遮断弁はフロアやプラットホームに設置され、開度表示が容易に見える位置に設置されているか。
・ 計器のエレメントの取り付け向きは正しいか。
・ 流量計の直管長は適切な長さがとられているか。
機器周り
・ マンホールやハンドホールはフロアやプラットホームから容易にアクセスできるか。
・ ポンプ吸込みラインのレデューサーはTop flatのエキセントリックレデューサーになっているか。
・ 遠心ポンプの場合、ポンプと止め弁との間にチェッキ弁が設置されているか。
・ シェル&チューブ型熱交換器のシェル側のベント弁/ドレン弁の操作はできるか。
・ 冷却水熱交換器の冷却水配管のベント弁の操作はできるか。
・ 機器へのアクセスルートは問題ないか。
ラインチェック作業中の注意点
ラインチェック作業は基本的に、施工された配管と手元の図面(P&IDなど)とを照らし合わせながら進めて行くため、足元や周囲への注意が疎かになりがちです。
上述した通り、ラインチェックは配管施工が完全に完了していない段階で行うことも多いので、プラントの現場は足場などの建設資材や施工前の配管などが転がっていることが多くあり、転倒の危険性が大きいです。また、グレーチングや手すりの施工も不十分となっている可能性があるので、側溝に足を取られたり、最悪の場合転落の可能性もあります。
そのため、ラインチェック作業時は安全には十分に注意しなければなりません。
ラインチェック時の注意点
・ 決して急がず、無理な行動はしない
・ 塔槽類のマンホール内部などの密閉空間を無闇に覗き込まない
・ 建設工事の朝会等で、工事状況・危険エリア等を確認しておく
・ 怪しい部分、不安に感じた部分は逐一写真を撮り設計側に確認する
・ ラインチェックとは関係なくても、機械的な問題点(壊れ、溶接不良等)もコメントする
まとめ
今回の記事ではラインチェック(Line Check)について解説しました。
ラインチェックとはプラント建設時、配管やバルブハンドルの向き等がアイソメ図通りに施工されており、プロセス要求が守られているかを確認することです。
主にプロセス設計担当のエンジニア(プロセスエンジニア)と配管エンジニアにて実施され、プロセスエンジニアはP&IDに記載しているプロセス要求(Note欄など)や現場の操作性、メンテナンス性などを確認し、配管エンジニアはアイソメ図通りに施工されているか(バルブの向きやサポートなど)を確認します。
補足:会社やプロジェクト規模によっては、品質保証部門や客先などで実施したり、外部委託することもありますが、本記事では大規模の化学プラントを想定しています。実際の業務ではプロジェクトの体制表や役割分担に従って下さい。
ただし、施工の最終確認のためには、各確認項目を双方の担当者が確認することが重要です。そのため、各担当者は、レイアウトや配管に関する技術資料、プロジェクトスペックなど把握しておかなければなりません。
この記事が役に立てば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。